野菜や草花組み合わせ… キッチンガーデン試してみない?

(1998年7月8日、朝日新聞)

美しさと収穫の両方を楽しむ園芸

ベランダの寄せ植え

ガーデニング人気もすっかり定着したなかで、最近、「キッチンガーデン」という言葉をよく耳にする。野菜やハーブ、草花を組み合わせ、美しさと収穫の両方を楽しむ園芸のことだ。本格的には何種類もの野菜や果樹、通路を配して庭全体をデザインするが、ベランダの寄せ植えでも、雰囲気は味わえる。初心者向け「キッチンガーデン」を、専門家に紹介してもらう。

家庭菜園
英国キッチンガーデン

「効率のいい栽培法ではなく『楽しみ』。見た目の美しさを大事にするのが家庭菜園との違いです」。「英国キッチンガーデンの楽しみ」などの著書があるイギリス在住のガーデン研究家、吉谷さんは説明する。

中世ヨーロッパの庭園

ヨーロッパでは中世から城や屋敷の庭園に併設され、ロンドン近郊などで現在も洗練された庭が公開されている。吉谷さんは5年前、野菜や花を混植する美しさに気づき、自宅でも始めた。「育て、収穫し、おいしく食べる。ブーケを作ったり押し花にしたり、何通りにも楽しめます」

ミニトマトやレタス

1日最低4時間の日当たりと良質の土が必要な条件だ。庭がなくても、ベランダか日の当たる窓があればミニトマトやレタス類などで小さなキッチンガーデンができる。

バジル、トマト、ブーケガルニ(香草の束)

組み合わせに禁じ手はないが、吉谷さんの提案はスパゲティに使うバジルとトマトや、ブーケガルニ(香草の束)用の寄せ植え。目的があれば、ブームにつられたが続かない、ということも避けられる。

コンテナ
土やたい肥

「野菜は連作を嫌うので同じものを続けて植えないで。コンテナは一回使ったら土を換えたりたい肥を混ぜたりして下さい」。水は表土が乾いたら、底から流れ出るくらいたっぷり与える。コツは面倒を見る根気と手間だ。「今日食べごろだな、虫がついてるな、と毎日観察して下さい。買って食べるのとは違う、豊かな気分が味わえますよ」

ハーブや野菜、種類も豊富に

健康志向

ガーデニングブーム、健康志向でハーブや従来なじみの薄い野菜も注目され、出回る種や苗も豊富になっている。

東京・渋谷、第一園芸本店
ハーブ苗(バジル、ミント、イタリアンパセリ、ブルーベリー、スグリ、ブラックベリー)

東京・渋谷の第一園芸本店では、ハーブ苗のなかでもバジルやミント、イタリアンパセリが人気だ。果樹は「目にいい」と話題になったブルーベリーのほか、1997年からスグリやブラックベリーが売れている。園芸誌以外の雑誌などがハーブや野菜の特集を組むことも増え、「記事に出たものを探しにくる人が多く、お客さんの方が情報が早いですよ」と、売り場の担当者。

横浜「サカタのタネ」

「サカタのタネ」(本社・横浜市)企画室の藤巻さんは、「まず育てやすい葉ものを作ってみては」とアドバイスする。種から簡単に育てられ、早いものは1カ月ほどで収穫できる。

ロケット、チンゲンサイ、サニーレタス、葉ねぎ、チマサンチュ、ローメンレタス

おすすめはゴマのような香りが特徴のロケットや、チンゲンサイ、サニーレタス、葉ねぎなど。焼き肉を包むチマサンチュや、イタリア料理などに使うローメンレタスも人気が出ている。

ミズナやシュンギク

多種類の葉ものを少しずつ育てて5、6センチの新芽をかきとり、混ぜてサラダにするのも面白い、という。彩りが良く、欧米ではレタス類や花、ミズナやシュンギクなど日本の品種もとり混ぜて食べているそうだ。

高温多湿の気候

ハーブや野菜は輸入の種も手に入るが、藤巻さんは「高温多湿の気候で病気が出やすいものもある。日本の気候に合うかどうか見極めて」と話している。

寄せ植え こんなやり方あります

●ブーケガルニ・コンテナ(ゲッケイジュ マジョラム パセリ)
シチューやスープ、パスタのソースに欠かせないハーブのブーケ作りに。

ハーブは多湿を嫌うので、素焼きの植木鉢が最適。用土は小粒の赤玉土と腐葉土、川砂を6:3:1で配合するが、市販のハーブ用土を使うと便利。鉢の穴は虫よけの網でふさぎ、水はけを良くするため底に大粒の赤玉土を敷く。用土に緩効性肥料を適量混ぜて、鉢のふちから2、3センチのところまで盛る。

●トマトのための寄せ植え(ミニトマト バジル マリーゴールド)
トマトとバジルを組み合わせて植えると、虫がつきにくい。

マリーゴールドにも虫よけの効果と土壌を改良する力がある。
なるべく大きめの容器を使う。素焼きの鉢が見た目もいい。用土は小粒の赤玉土と腐葉土を7:3で配合するか、市販の野菜用培養土を使う。前者と同様に、底に大玉の赤玉土を敷き、肥料を配合した用土を入れる。トマトには定期的な追肥が必要。

注目のキッチンガーデン 見てよし食べてよし 野菜+ハーブ+草花

(1999年6月29日、読売新聞)

ガーデニングと家庭菜園

最近、ガーデニングと家庭菜園の要素を合わせた「キッチンガーデン」が注目されている。見るだけではなく、食べる楽しみも味わえるのが魅力となっている。

ベランダのプランター
キャベツ、フェンネル、パセリが、マリーゴールドと

「わたしのキッチンガーデン」(主婦の友社)の著書もあるイラストレーター、たなかやすこさんの自宅。ベランダのプランターには、キャベツ、ハーブの仲間のフェンネル、パセリなどの野菜が、マリーゴールドと共に植えられている。

ハンギングバスケット
エンダイブとイタリアンパセリ

天井から下がるハンギングバスケットには、葉の縮れたレタスのようなエンダイブとイタリアンパセリの葉が茂る。何種類かの野菜を寄せ植えするなどして、美しく育てるのが、キッチンガーデンだ。

トマトよりも、サニーレタスやキャベツ

「初心者はトマトなど実ものよりも、サニーレタスやキャベツなど葉ものの方がいい。花を咲かせて、実を大きくする野菜は、手間がかかります」と、たなかさん。

兵庫県西宮市、北山緑化植物園
16世紀フランス、南北アメリカ大陸から

キッチンガーデンの歴史は古い。兵庫県西宮市にある北山緑化植物園の早野泰子さんによると、16世紀のフランスにその原型があるという。南北アメリカ大陸からジャガイモやトマトなどの珍しい野菜が持ち込まれ、王宮などで主に観賞用として栽培されていた。それを食べることが、権力のあかしでもあった。

17世紀イギリス
一般家庭や農家でも

17世紀になると、イギリスにも広がり、一般家庭や農家でも花と野菜が庭で栽培されるようになったという。

仏壇に飾る切り花

「昔から日本でも、家の周りで仏壇に飾る切り花を育てたり、家族で食べる野菜を作ったりしてきた。いわば日本風キッチンガーデン。欧風のキッチンガーデンも受け入れやすいのでは」と早野さん。

コンパニオンプランツ
共栄作物、共生植物

「コンパニオンプランツ」の考え方を取り入れることを早野さんは勧める。共栄作物、共生植物とも言われ、味や香りをよくしたり、病害虫を防いだり、日陰を作ってやったりと、一緒に植えると有益になって相性のよい植物のことだ。

ネコブセンチュウ
ニンニク、バラ、パセリ

例えば、たなかさんのキッチンガーデンにもあるマリーゴールドは、根から出る成分でネコブセンチュウの被害を予防する。ニンニクとバラという組み合わせでは、ニンニクがバラの病気を防ぎ、パセリとバラでは、パセリがバラの香りをよくするのだという。

コンテナ(鉢やプランター)
スイートバジル、ナスタチウム、チャイブ

コンテナ(鉢やプランターなどの容器)でも、キッチンガーデンはできる。例えばトマト、ハーブの一種のスイートバジル、赤やオレンジの花が咲くナスタチウム(キンレンカ)、アサツキの仲間のチャイブの4種を鉢で育てる。バジルはトマトの味をよくすることで知られ、ナスタチウムとチャイブは虫よけになる。

ドライフラワー

キッチンガーデンの大きな喜びは、自分で作ったものを食べられること。「店では手に入りにくかったり、高かったりする果実を育てて楽しむのもいいですね」と早野さん。さらに、ハーブ類はドライフラワーにすることもできる。

「屋上緑化」 自宅の上で緑を楽しむ

(2005年5月26日、産経新聞)

業者に技術の差、実績みて慎重に選んで

屋上やバルコニー
人工の庭

庭がない、あっても日当たりが悪い…などの理由から、自宅の屋上やバルコニーで植物を栽培する「屋上緑化」を取り入れる人が増えている。芝生を植えたり、季節の花や家庭菜園を楽しんだり-とやり方はさまざま。ただ、建物の上に人工の庭を作るため、土などの重さや排水、植える植物の種類など気をつけるべき点は多いようだ。

家族が集う場所

下町の住宅密集地
屋上緑化工事

「東京都墨田区に住む岡崎さん(35)の自宅では、まさに屋上緑化工事の最中だった。下町の住宅密集地。庭はあるが、周囲にマンションができたこともあり、「年々日当たりが悪くなっていた」(岡崎さん)。2005年4月に長男が生まれ、「緑に触れながら遊ばせてやりたい」と導入を決めた。

鉄骨造4階建て
芝生、フジ棚、池。野菜も栽培

「緑化するのは鉄骨造4階建ての屋上部分で、日当たりは抜群。「芝生を張り、フジ棚があり、一部に池も…。野菜も栽培したい。これまで屋上はほとんど来ない空間だった。庭ができれば、家族が集う場所になりそう」と期待を込める。

重さとの戦い

一戸建て、マンション

都市部には庭が造れない一戸建ても多く、マンションには庭はない。「生活の中でもっと緑を楽しみたい」-そう考える居住者が、屋上やバルコニー、ベランダを本格的に緑化するケースが増えている。

NPO法人「屋上開発研究会」
環境意識や、助成制度

「NPO法人「屋上開発研究会」の野溝智彦常務理事は、「軽い人工土壌の開発や防根、防水技術などの確立により、一般の家屋でも導入しやすくなった。環境意識の高まりや、自治体が相次いで助成制度を始めたことも追い風」と説明する。

人工の庭

工事は基本的に業者に依頼することになる。建物の上に人工の庭を造るため、さまざまな配慮が必要だからだ。

建築基準法
芝生、ウッドデッキ、花壇

例えば重さ。建築基準法により、建物に載せられる物の重量は制限されている。芝生を植え、ウッドデッキを置き、花壇を造り、プランターを配し-といったデザインは、いわば重さとの“戦い”だ。

東邦レオ(大阪市)
建築、設備、造園

岡崎さん宅の庭を設計した、東邦レオ(大阪市)のガーデンプランナー、池田菜王子さんは「制約がある中でいかに居住者の希望を表現するか。建築、設備、造園などの幅広い知識が求められる」と話す。

排水対策や防根対策
雨漏りなどのトラブル

また、排水対策や植物の根から建物を保護する防根対策も不可欠。不備があれば、雨漏りなどトラブルの原因になる。野溝さんは「技術のレベルは上がっているが、業者によって差があるのが現実。施工実績などを参考に慎重に選んでほしい」とアドバイスする。

大事な手入れ

杉並区

実際に屋上緑化を取り入れた家を訪れた。杉並区に住む内藤さん(45)宅。ガーデニング好きの奥さんの提案もあり、2004年8月に工事を行った。

ウッドフェンス
バラやラベンダー、オリーブ、アジサイ

緑の芝生がきれいに生えそろい、バラやラベンダー、オリーブ、アジサイなどの草花が風に揺れていた。ウッドフェンスの向こうに屋根の連なりが見えなければ、屋上にいることを忘れてしまいそうだ。「プランターで育てていたころに比べ、植物が力強く育つようになりました」と朱美さん。「屋上に庭ができ、家族で過ごす時間が増えた」と笑顔を見せる。

ただ、屋上で植物を育てる際は、いくつか注意点がある。

落葉樹はなるべく内側
日光を好む種類

前出の池田さんは、
(1)葉が外に落ちないよう、落葉樹はなるべく内側に
(2)大きくなり過ぎる樹木は避ける
(3)日光を好む種類を選ぶ
-ことを挙げる。また、水や殺虫剤を散布する際は、「周囲に飛ばないよう」気を使うことも必要。排水口が詰まらないよう、落ち葉などをマメに掃除することも大切だ。

日ごろの手入れ

「枝が折れていないか、植物が育ち過ぎていないか、など小まめにチェックを。隣家に迷惑をかけないよう楽しむには、日ごろの手入れが欠かせません」と話している。

費用の一部 助成する自治体も

防根設備、人工土壌、自動潅水システム

業者によって幅はあるが、東邦レオの場合、工事費の目安は1平方メートル当たり4-6万円(30平方メートル以上の工事の場合)。これには防根設備、人工土壌、自動潅水(かんすい)システム、植物など一式が含まれる。

ヒートアイランド現象

一方、都市部の気温が上昇するヒートアイランド現象などへの対策から、費用の一部を助成する制度を設けている自治体も多い。

杉並区、大阪市、埼玉県川口市

例えば、杉並区の「1平方メートル当たり2万円、上限100万円」、大阪市の「費用の2分の1以内、上限200万円」などだ。「5年間以上の維持管理を条件」とする埼玉県川口市など、緑地の効果を継続させるため、導入後まで目を配る自治体も増えている。