日本の「10倍株」のランキングです。株価が10倍以上になった銘柄の一覧になります。10倍株は「テンバガー」と呼ばれ、多くの投資家が注目する存在です。今回は、10倍になりそうな株の候補や予想ではなく、実際に10倍を達成した銘柄を集めました。(参考資料:ヤフーファイナンス、四季報、スナップアップ投資顧問のレポートなど)


「10倍株」ランキング【2010年代】

以下は、2010年代で株価が10倍以上になった銘柄のランキングです。2009年の年末の終値と、2019年の直近の終値までの10年間で比較しました。2009年末時点で上場していなかった会社は対象外です。1位はモノタロウの96倍、2位はJACリクルートメントの88倍、3位はディップの55倍となっています。

トップ20

順位 銘柄 倍数 2009年末の終値 2019年10月28日の終値
MonotaRO
(モノタロウ)

説明↓
96倍 33.19円 3,190円
→現在の株価
JAC Recruitment(ジェイエイシー・リクルートメント)説明↓ 88倍 22.92円 2,018円
→現在の株価
ディップ
説明↓
55倍 54円 2,976円
→現在の株価
GMOペイメントゲートウェイ 52倍 151.25円 7,850円
→現在の株価
RIZAPグループ(ライザップ) 37倍 6.94円 254円
→現在の株価
クイック 36倍 42円 1,501円
→現在の株価
神戸物産 35倍 171.13円 6,000円
→現在の株価
ワークマン 29倍 266円 7,720円
→現在の株価
シーティーエス 28倍 28.13円 793円
→現在の株価
10 コシダカホールディングス 28倍 56.63円 1,583円
→現在の株価
11 日本ライフライン 25倍 70.75円 1,753円
→現在の株価
12 トラスト・テック(ビーネックスグループ) 24倍 55.5円 1,346円
→現在の株価
13 セリア 24倍 118.3円 2810円
→現在の株価
14 エムスリー 23倍 117.5円 2,675円
→現在の株価
15 ハーモニック・ドライブ・システムズ 22倍 233.87円 5,160円
→現在の株価
16 日本M&Aセンター 21倍 143.75円 2,964円
→現在の株価
17 アークランドサービスホールディングス 16倍 119.17円 1,908円
→現在の株価
18 フジ・コーポレーション 15倍 141円 2,127円
→現在の株価
19 前田工繊 15倍 122円 1,819円
→現在の株価
20 さくらインターネット 14倍 52.94円 721円
→現在の株価

※株式分割などを考慮に入れた調整後の株価で比較しています。

10倍株の個別分析

2010年代の10倍株の個別銘柄分析です。

MonotaRO(モノタロウ)

驚異の「株価100倍」

工具通販サイト「モノタロウ」を運営する。 本社は兵庫県尼崎市。阪神電鉄の各駅停車しか止まらない出屋敷駅に隣接するビルにある。 かつて個人商店がコンビニエンスストアに代わったように、ビジネスの間接資材の取引もネットに置き換わりつつある。 その流れをいち早く読み、優れた取引サイトを構築した。 サイトやシステムは技術的な優位性が卓越しており、 高い競争力と収益力を誇る。

独自のサイト内検索エンジンで差別化

技術面の優位性の一つとして、独自のサイト内検索エンジンが挙げられる。精度向上の詳細については明らかにしていないが、例えば検索結果の「おすすめ順」の並び替え方や、結果の絞り込み方などが差別化のポイントになっている。実際にモノタロウのトップページで検索してみると、そうした工夫の跡が垣間見える。

例えば「安全靴」と入力すると、検索フィールドのすぐ下に関連しそうな検索語や商品ジャンルが並ぶ。そのうちの1つ「安全靴 スニーカー」にマウスカーソルを合わせると、今度は画面右側に検索結果の上位とみられる商品が間髪入れずに表示される。トップページから別画面へ切り替える前の段階で、ジャンルや複合語などで来訪者のニーズを絞り込み、目当ての商品を見つけやすくしているわけだ。

グーグルなどで商品を検索して当社サイトの商品情報にたどり着くこともできるが、自社サイトの検索フィールドを使って商品検索した方が素早く、的確に見つけられるという。

検索エンジンの精度向上で培った絞り込みのノウハウは、別のところでも生きている。例えば会員登録した企業への紙のカタログの送付だ。MonotaROではジャンル別に18種類のカタログを作成し、毎年春と秋に半分ずつ改訂している。合計で年間300万部も発行し、当然ながら製本代や送料に見合う効果が求められる。

そこで、来訪者の検索語からおすすめ商品を提示するノウハウを生かし、個々の会員の属性や検索・購入履歴から興味を持つ可能性のある商品ジャンルを類推。購入可能性が一定のしきい値を超えたジャンルのカタログを郵送する。「購入可能性が高ければ、過去に購入履歴のないジャンルであってもカタログを送って『モノタロウはこんなジャンルも扱っているのか』という気づきにつなげているようだ。

サイト改良時のテスト

モノタロウがもう1つ徹底しているのが、サイト改良時のテストだ。サイトを改良する際は、いきなり切り替えずに一部の会員だけに改良後の画面を表示。新旧の画面での操作履歴を比較し、改良効果をきちんと確認してから本格的に切り替えるという。

MonotaROの概況と今後の見通し(2019年10月時点)

工場・工事用や自動車整備用等の間接資材をインターネット等により通信販売。取扱商品は2019年6月末で約1800万点。

2019年12月期の営業利益は前期比19・9%増の見込み。物流拠点の自動化設備の導入等で業務の効率化が進んでいる。ネットにおける広告の出稿や検索エンジンの最適化などで、従来の中小企業に加え大企業の新規顧客の開拓も順調とみられる。最近の月次売上高や新規顧客獲得数も堅調な模様。

株価は2019年の高値圏にあり、持ち株は利益確定の売りも一法。ただ、事業の成長性に期待し長期持続も選択肢。

JACリクルートメント

株価88倍

JACリクルートメントは1975年、英国ロンドンのスーパーの2階、4畳半ほどのオフィスで創業した。その後、シンガポールに進出した。日本でサービスを開始したのは1988年。人材紹介サービスを日本に逆輸入した。外資系企業と見られがちだが、純粋な日本の企業である。社名のJAC(ジェイエイシー)は「Japan Agency & Consultancy」の頭文字から取った。日本(人や企業)にとっての代理人であり、相談相手でありたいとの思いから付けたという。

海外での採用をサポート

日本の採用のやり方はグローバルルールとは異なる面があると言われる。例えばイギリスでは履歴書に年齢も、性別も、国籍も、既婚かも書かない。でも、日本ではいまだ履歴書の必須項目となっている。

国際基準と違う採用方法を掲げる日本企業が海外進出し、グローバルで通用する人材を採用しなければならない時代になってきた。ここに国際基準にのっとった人材紹介サービスの商機があった。

アジアで現地のローカル人材を紹介

とりわけ伸びているのがアジア市場である。アジアでは、日系企業は従来は外資系企業の出身者はあまり採用してこなかった。外資系出身者は次も外資で働くのが一般的だった。しかし、状況が変わってきた。

理由は、日系企業の海外進出がここへきて加速したこと。今まで海外とは無関係だったような業種までどんどんアジアに出るようになり、多くの企業が、外資系で働き、海外経験のある即戦力を求めるようになった。

駐在員にとってかわる戦力

もともと現地にいるローカル人材は、現地で外資系企業と協業したり、逆に競合したりする場合にも役に立つ。海外でも日本で採用した「生え抜き」にこだわる傾向が強かったが、グローバルな考え方に転換してきた。

また、日本人の赴任者をなるべく帰国させて、日本語ができる現地の人材に置き換える動きもある。駐在員を海外に送り込むのは何かとコストが高くなるからだ。そういう人材は希少であるため、人材紹介会社であるJCAにチャンスが到来したという。

ディップ

株価50倍

ディップは「バイトル」などのアルバイト求人サイトを運営する。英会話スクールを経営した経験のある冨田英揮社長兼CEO(最高経営責任者)が1997年に創業した。ネットでの求人という時流に乗っただけでなく、「危機や不況に強い会社」としてプロの投資家から高く評価されている。

リーマンショックなどの危機で底力を発揮

リーマンショック直後の2009年度は、人材マーケットの縮小で売上高が79億6900万円と前年度より約30%も落ち込んだ。同業他社の中にはリストラに走る企業もあったが、ディップはテレビコマーシャルの抑制や、管理職の給与カットなどのコスト削減で必死に耐えた。

だが、宣伝を抑えるとサイト利用者が減り、企業からの求人広告も減ってしまう。危機が危機を呼ぶ構図に入り、手詰まりになった。そのとき、冨田社長が示したのが「縮小均衡はやめる」という強い意志だった。利用者(求職者)を集められる新たな付加価値をつくり、広告主を呼び戻そうとした。

考え出したのは、アルバイトを求めている企業・店舗の様子を動画にしてディップのサイトで視聴できるようにする新サービス。当時はまだ「ガラケー」の時代で動画コンテンツは今と比べものにならないほど少なかった。求職者の間で、貴重な情報を動画で見られるとあって関心を集めた。

もちろん、数万におよぶ企業・店舗を撮影するのは大変な作業。当初は「200~300件程度を掲載」という案もあったが、経営陣は「こんなときこそ攻めるんだ」と判断。600人の役員・社員全員が街に出て撮影して回り、成功させた。